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いじめ代行アプリ
まだ暑さの厳しい9月。
警視庁管内は、ある連続事件で揺れていた。
新学期が始まったばかりの学生を狙った暴行事件が続いているのだ。
被害者の共通点はなく、また、防犯カメラのない場所で犯行は行われている。
そのため、被害者の証言をもとに捜査が行われているのだが、なかなか進展がない。
被害者によって証言が異なり、未だに犯人像すらはっきりとしてこないのだ。
それぞれの事件に別の犯人がいる可能性も含め、目下捜査中なのである。
新人刑事、緒方愛宕。彼女も先輩刑事、井上と共に聞き込みを続けていた。
いじめ代行アプリの存在を聞いたのは、駅前で出会った女子高生からだ。
早足で行き交う人の中、彼女はスマートフォンを見ながら壁に背中を預けていた。
「すみません、中央署刑事課の緒方と言います。少しお話を聞いても良いですか?」
警察手帳を見せ、少女に声をかける。隣にいた井上も同じく警察手帳を出した。
少女は少し呆けたような顔をしたが、頷いたので愛宕は口を開く。
「近辺で高校生が被害にあう暴行事件が多発しているんです。一人でいるのは危険だわ」
愛宕の言葉に少女はきょとんとしている。
だが、すぐに口元に笑みを作った。
「大丈夫ですよ、刑事さん。私、ターゲットに登録されていないですから」
彼女の答えに今度は愛宕がきょとんとする番だ。
言葉の意味がわからず、瞬きを繰り返す。
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