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10代後半に見えるその少年は、包囲されていることに気づいていないのか、スマートフォンに目を落としている。
愛宕とシグマは、彼の元へと歩き出す。
「思ったより早かったなァ。さすがだね、予想以上だよ」
近付いてきた二人に気付いたのか、カイはスマートフォンから顔を上げた。 その口元には笑みが浮かんでいる。
愛宕はカイの声に聞き覚えがあった。
「あなた、あの時の……」
「知ってるのかよ?」
驚く愛宕に、シグマはジト目になる。
「いじめ代行アプリのことを教えてくれた子……松見さん」
「あはは、ごめんね、お姉さん。名前、ちょっとだけ嘘をついた。本当の名前はウミじゃなくてカイだ」
「……そう、あなたがカイだったの」
いじめ代行アプリの存在を教えてくれた、少女は松見海と名乗っていた。
「そ、俺がカイ。さっきのはただの変装だよ。趣味みたいなもんさ」
カイはくつくつと笑う。
取り囲まれているというのに余裕な表情だ。
「お前が『いじめ代行』の主犯なんだな」
「アプリを作って管理していたのは俺で間違いないよ。ゲームみたいにしたらきっと面白いだろうって。君もそう思うだろ」
似た者同士の二人。
しかし、シグマはカイの考えに共感しなかった。
「そうやって、人間を操って神様にでもなったつもりかよ。ただの弱いものいじめじゃんか」
馬鹿みたいだ、と呟くシグマ。
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