Σ ーシグマー

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「すでにアプリは書き換えた。今はただのゲームアプリだ。お前の下らない遊びは終わりだよ、カイ」 そう言ってシグマは刺すような視線を向けた。 カイの正体を突き止めたときに、ついでにアプリのデータを書き換えてしまったらしい。 「どうして、君は俺の手の届かないところに行くんだ」 「そんなの知るか。お前の実力が足りないだけだろ」 項垂れるカイに(とど)めのような言葉を投げつける。 愛宕はそんな二人のやり取りをそばで見守っていた。 (カイの言いたいこと、シグマには伝わっていないみたいだけど……) 「ねえ、これからカイはどうなる?」 項垂れたまま動かないカイを指差し、シグマは愛宕に声をかける。 「まだ逮捕状が出てないから、任意での聴取になるかしら」 シグマに対してそう答えた愛宕は、私服警官に声をかけてカイをパトカーに乗せた。 任意同行なので拒否も出来たはずだが、彼は力なく頷くだけだった。 聴取が行われ、彼がいじめ代行アプリの制作者であることが確定すれば逮捕状が請求されるだろう。 いじめ代行アプリを使った傷害事件の犯人たちは個別に取り調べられ、それぞれ対応されるはずだ。 「……これで、終わりね」 「んなワケないし。今度はあいつにアプリを作らせた奴を探さないと」 「え?」 一段落してため息をついた愛宕に、シグマはツッコミをいれる。 事件はまだ終わってはいないのだ。
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