Σ ーシグマー

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「シグマ、お前が作った犯罪者管理システム。アレを悪用しているやつがいるらしい。その辺のセキュリティはどうなんだ?」 井上がいきなり本題をぶつける。 シグマはこの特殊拘置施設に収容されているため、自分でセキュリティ管理しているはずはない。 「警視庁のサイバー犯罪対策室に頼んであるよ。ボクは今、自由に電子の海に潜れないからね」 ゴーグルで目を塞がれているシグマはくつくつと笑う。 視覚から得る情報が多いため、特殊なゴーグルで視界を封じられているのだ。 「質問を変えるわ。シグマ、あなたの作ったシステムを乗っ取る……もしくは、使いこなせる人物に心当たりはある?」 愛宕の問いに、シグマは笑みを深くした。 「心当たり、あるんだな」 井上が呟くように言う。 シグマの反応を見て直感したのだ。 「ボクと同じ年の子に、カイってハンドルネームの子がいるんだけどね。たぶんその子じゃないかな」 シグマが口にした心当たりの人物、カイ。 しかし、ハンドルネームだけでは調べようがない。 「シグマにカイ、ね……」 愛宕は呟きながらシグマをチラリと見る。 「そうそう、カイはハンドルネームだけど、本名もカイって名前らしいよ。苗字じゃなくて、下の名前だよ。漢字かひらがなかはわからないけど」 思い出したようにシグマは二人に声をかける。 忘れていたわけではないのだろう。その証拠に口元の笑みは消えていない。
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