4.バスローブ姿で

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4.バスローブ姿で

「こちらは、遺族捜査官の上泉圭さんです」  剣崎警部は淡々と紹介した。 「こちらはご存知の、唐久保法務大臣」  一気に強気の仮面を剥がされた唐久保は、怯えた視線で圭を見つめている。次男よりもずっと父親に似ている長男に、上泉定太郎の面影を見ているのは明らかだった。  後ずさった彼を追うようにして、あたしたちは部屋の中に入った。最後になった新堂刑事がそっとドアを閉めた。  唐久保はさらに後ずさった。あたしたちも前へ進んだ。奥が見えた。ゆったりした広さのツインルーム。そのベッドのひとつに上泉慎が腰掛けていた。  バスローブ姿で。 「さて、いろいろと伺いたいことがあります。長い話になるので、立ち話もなんですよね。かと言ってここじゃ手狭だし、全員が座れない。いかがでしょう、大臣。夜分恐縮ですが、桜田門にご足労いただくというのは?」  唐久保は、ひどく疲れたように肩を落とした。
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