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「ここで暮らす筈だったんだ…」
リビングを見回す優花。
覚醒後の精密検査で、頭に異常がなかったので退院した優花。
優花のご両親は、優花に僕の記憶がないなら、しばらく実家で過ごした方が良いと提案してきた。
娘の状況を鑑みれば至極当然の事。
ずっと寝たきりで体力も弱っている。
結婚式を挙げた時より、だいぶ痩せてしまった。
法律上は婚姻関係にある2人とは言え、今は優花にとっては赤の他人同然の僕。
でも退院した日は、夫婦水入らずで過ごしたいと、強引に僕の家に連れてきた。
性的な事を含め、色々無理強いはしないと約束して。
多忙な仕事の合間、僕が出来る限り面会してたのを知ってる彼等は了承してくれた。
「式前に引っ越したばかりだったんだよ」
リラックスして貰いたい彼女の為に、ハーブティの用意をする。
「へえ。じゃ貴方は1年以上一人暮らししてたんだ?」
「うん、寂しかった…」
優花の母性に訴えかけようと、首を傾け上目遣いに見る。
「…別れようとは思わなかったの?」
ズバッと核心に触れてくる。
相変わらずだ。
「うーん。全く思わなかったって言えば嘘になるけど、石の上にも三年って言うじゃん?それ位は待ってみようって」
自分には喉に良い蜂蜜入り紅茶。彼女にはカモミールティーを出した。
「そ。忍耐強いんだね」
猫舌の優花はフウフウ息を吹きかけてる。
変わってない仕草に胸が熱くなる。
可愛い。
調理した物を直ぐサーブ出来る様、キッチンカウンターのある部屋を選んだ。
共働きでも家事が楽になる様に、効率的な動線の間取りをチョイスした。
勿論広さも確保しつつ。
この部屋を優花と内覧した時、彼女はダブルベッドが置けるねと言っていた。
でも僕は、今のベッドで引っ付き合って寝るのが好きだから、彼女の要望を却下した。
そんな事を思い出してると、
「気持ちワルい、一人笑い」
と冷めた声がした。
僕は軽く咳払いをして
「今夜は、客間で寝て」
本当は一緒に寝たいけど。
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