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彼女に悲しい顔をさせたかった訳ではない。 「そっか…優花と親しくなる前から大勢いる同期の中で、存在を認識されてたって事で今日は善しとするか」 「鈴木君、目立つから」 ハーブティーを飲みながら、やっと微笑んでくれた彼女を無性に抱き締めたい。 そう、僕は目立つ。 幼い時から人より背が高く、肌も毛髪も色素が薄いせいだ。 血筋だが、上京するまで僕の呪縛だった。 母が父を置いて他の男と家出した噂は、狭い田舎では瞬く間に広がった。 僕は容姿が母に似てたし、姉は同性という事で何かと肩身が狭かった。 温厚な祖父母や父も苦い想いを味わった。 兎に角、目立たない様に大人しく行動や言動に気を付けた。さもないと 「あの嫁の、子」 と世間から後ろ指を指される。 成長の過程で僕は萎縮し、姉は怒りっぽくなった。 しかし思春期に突入すると、どんなに僕が大人しくしていても、回りの女子がほっといてくれなかった。 生来の容姿が際立ち始めたのだ。 僕にその気はサラサラないのに、告白されたり騒ぎになったり。 ある時、部活帰りに停留所でバスを待つ間、うっかり舟を漕ぎ横に座っていた女子にもたれ掛かり大騒ぎになった。曰く僕がその女子にチョッカイ出してると。 他愛もない事が大事件に発展する狭い社会に辟易し、進路は都会の大学へという気持ちは早いうちに芽吹いた。 思い出す黒歴史を振り切る様にして、優花に尋ねる 「仕事はどうするの?」 「明日、会社に挨拶に行くわ」 僕らの組織は福利厚生が手厚い。なので1年以上寝たきりだった優花も一応籍はある。だが 「そんな体で?体力が回復してからにしなよ」 病院から車椅子を使った。 優花は筋肉が衰えてるので、当分通院で理学療法によるリハビリが必要だ。
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