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「風間課長に一度きちんと長期不在をお詫びしたいし、今の私にどんな仕事が出来るのか知りたいしさ。まあ、籍はあっても居場所ないかもしれないけど」
「…」
優花は芯が強い。
今後の二人の生活に不安だらけの僕と全然違う。
「でも、どうやって行くの?僕、明日早いよ」
今日だって車椅子だったり、松葉杖だったり、僕の支えだったりして歩行が通常ではない。
「ん。明日は母が付き合ってくれるって。で、そのまま家に帰る」
この部屋で過ごした記憶がない今の優花にとって、家とは、あの彼が隣にいる家。
これまでの彼の様々な態度から、嫌な予感しかない。
「リハビリに通う時はどうするの?」
「あ~お隣の陸って子が、テレワークで自由が利くから付き添ってくれるって」
携帯の画面をフリフリ僕に見せる。
彼と連絡を取り合ってるのか!?
腹が立った。
一呼吸おいて鎮めてから
「ねえ。す・ず・き優花さん、記憶にないかもしれないけど、貴女は僕の妻なんだよ。他の男に支えられる妻の姿が気分良いと思う?」
視線が絡み合う。
優花が先に外した。
「…だって覚えてないし。付き合ってたのも、結婚式したのも!」
「優花の中では僕は他人同然だから、親しい友人に頼むって事?」
横を向いたまま、彼女はばつが悪そうに
「そういう事かな。今は接点の薄かった同期より、気心知れた陸の方が安心出来る」
僕は唇をかむ。
確かに結婚式に呼んだ位、気心知れた仲なのだろう。
僕との交際、結婚に至るまでの記憶がない現時点では、隣家で幼馴染みの彼と紡いだ思い出や醸し出される安心感に負けてしまう。
だが、優花は男女の仲と関係ない友人と思っていても、彼の方では…
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