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「何をしている?」
吉岡は、縁側の柱に凭れ掛かるようにして座っている後姿に尋ねた。
「雷が綺麗だと思って」
春海は、振り向いて吉岡を見上げると、婉然とした微笑と共に答えを返した。
「濡れるぞ」
「平気ですよ。吹き込んでいませんし」
吉岡は春海の側に行くと、傍らに腰を下ろした。
「…光った」
春海が言い終わる間もなく、落雷の音が響き渡った。稲妻の光に、春海の横顔が一瞬、照らし出される。
「土砂降りだな」
言いながら、吉岡は既視感を覚えた。以前もこんな風に誰かと雨を見ていたことがある。あれはいつのことだっただろう。
やがて吉岡は「彼」を思い出し、記憶はゆっくりと時を遡っていった―。
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