雨ざんざん

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「…ったく、ひどい雨だ」  びしょ濡れになりながら、聡一郎とハンスはマンションに辿り着いた。二人で外食に出かけたのはいいが、ちょうど帰ろうとした矢先、天気が急変した。みるみるうちに暗雲が垂れ込め、激しい夕立に見舞われてしまったのだ。 「あれ、電気がつかない」  スイッチを入れたものの、一向に明るくならないので、ハンスはスイッチを何度も入れたり切ったりをする。  聡一郎はハンスにバスタオルを寄越しながら、 「落雷の恐れがあるから停電なんだろ…」  言い終える前に稲妻が走り、雷鳴が轟いた。落雷の光と音に身震いしたハンスは、足元の水滴に滑り、思わず聡一郎の腕に摑まろうとした。  だが、とっさのことに聡一郎もバランスを崩したため、二人は重なり合って床に倒れこんでしまった。  上に覆いかぶさった聡一郎は起き上がろうとしたが、目の前のハンスの表情を見て、動きをとめた。出会って以来、彼の瞳の中に時折見え隠れしていた欲望の影をはっきりと見て取って。  理性は何事もなかったように今すぐ離れろと命じたが、聡一郎は身じろぐこともできず、ハンスの眼差しを受け止めた。  互いの視線に絡め取られ、どちらが先に手を伸ばしたのかはわからない。指先が触れた瞬間、二人の間に何かが通い合った。抱き締めうと、早鐘のような鼓動を全身で感じた。血潮は脈打ち、息遣いが荒くなっていく。  唇が触れ合ってからは、もはや止めることはできなかった。熱い奔流に飲み込まれたように、二人は互いの体を求め合った。  外では、また一段と雨が激しさを増したようだった。
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