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針葉樹の切れ目から顔を突き出せば、目に映るのは息を飲む絶景だった。
円岩寺は崖の突端に位置するらしく、遠くの山々を一望することができる。
眼下に広がるのは、黄金色の稲穂が揺れる水田。
初夏の田植えの頃であれば、水を張った水田に太陽と雲、青空が映り込み、さぞかし壮観だろう。
せっかく来たのだから、この景色を写真に残そうと優一は思った。
崖から転がり落ちないよう、細心の注意を払いつつギリギリまで前進。
スマホのカメラを構え、シャッター音を響かせた。
こんなところまで連れて来られた甲斐があったとは言い難い。
ただ、完全なる無駄足ではなかったと思えるのは救いだ。
水田の写真もついでに撮ろうと目線を落とした優一は、危うくカメラを取り落としかけた。
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