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これでもし……もし、哲郎が言わんとするのが「田舎暮らし始めました」だったら許さない。
そんなつまらないオチ、いくら二十年来の仲であっても許してはなるまい。
最低限、往復の交通費は請求させてもらう。必ずだ。帰りはグリーン車だ。
ボディバッグから、そろそろ温くなりはじめたウーロン茶を取り出して二口飲む。
同時に、スマホに保存した封筒の画像で住所を再度確認した。
当たり前だ、あんな汚物を持って旅などできない。
住所には、平屋のコテージといった趣の家がある。
あまり手入れされていないようで、庭は雑草に占拠されていた。
なかには何本か、人の背丈よりありそうな雑草さえある。
いくらなんでも放置しすぎだろう。
優一は敷地に足を踏み入れ、インターホンを押した。
カメラに向かって、不機嫌そうな表情を作る。
間違っても、物見遊山のウキウキ気分でやってきたと思われたくはない。
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