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佐久良はじめました?
君は知るまいが
私は 或ることを始めた
知りたくば 此処へ来て
其の目で確かめ給え
そう書かれた紙切れを、村上優一は念入りに握りつぶしてから、ゴミ箱へ力強く投げ入れた。
まったく価値のない紙だ。ゴミクズだ。
他人のレシートなど、何の価値があろうか。クーポン券でもついていればいざ知らず。
件の紙切れは、恐らく酒屋と思しき個人商店で発行されたレシートだった。
経年劣化が著しく、感熱紙の印字は色あせてピンクに近い。
購入品は、ボジョレーヌーボーを1ダース。
そのレシートの裏に、例の文章が鉛筆でしたためられていたのだ。
優一はゴミ箱の底に虚しく転がったレシートに目を落としたまま腕を組んだ。
ため息は漏れ放題、眉間のシワも寄り放題。
というのも、差出人に心当たりがあったからだ。
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