一.

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一.

どれぐらい眠っていたのだろうか。 いまいち記憶も曖昧で、どうしてこんな病室のような部屋のベッドで一人で寝ているのかも思い出せない。 と、部屋の扉が開き、医者のような者たちが数名入ってきて何やら話し掛けてくるが、なんだろう、この違和感は。 声が、音が、金属音のような無機質なハウリングを起こして頭の中で回り始めて、その狂った響きに私は思わず耳を塞いで固く目を閉じた。 が、その時にまた気付く。 目を閉じたはずなのに、見えている。 しかしそれは本来視界に映るべき世界の姿では無い。 試しにまばたきをしてみても変わらずそこに映り続ける、まるでゲームのステータス表示のような記号と数字の羅列。 そして私は、初めて見るはずのその文字列の意味がわかる。 自分の目で見ているものを、いちいち「見ている」と認識・確認して理解している者など無いだろう。 それと同じなのだと思う。 音声の残響と共に頭蓋骨を振動させている駆動音が一瞬強まると、半分ほどが赤文字だった文字列が緑色に変わり、同時に残響が静まり、気分はどうだの、ちゃんと見えてるか、聞こえてるかだのの、医者のような者たちの声がクリアに、自然な人間の声として捉えられた。
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