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【童謡】鐘の音
ディンドンダンドンディンドンダン
何やら陽気な鐘の音が聞こえる。
一人で地面に絵を描いていたぼくは、その音が聞こえる方へ歩き出す。
するとどこからか、同じような子供がちらほらと現れる。
広場にある、低い塔の上の鐘を鳴らしているのも、また子供。
大きく重そうな鐘に繋がる、長く太いロープを軽々と引いて。
「君もやってみる?」
言われてやってみると、簡単に鳴らせた。
ロープを引く役を代わる代わるにみんなでやる。だれかと遊ぶのが楽しくて、キャアキャアと声が出る。こんなの久しぶりだ。
鐘の音につられたのか、子供の姿がさらにふえる。同じようにあつまってきただれかが鳴らし、ぼくも鳴らす。
みんなのために鐘が鳴る。
ロープを引かない子供は、いつしか輪になって踊り出す。まるでお祭りのよう。
「もっと鐘を鳴らして」
最初に鐘を鳴らしていた子が言う。
ああ、楽しい。さみしくない。
辺りは光にあふれ、あたたかな空気に包まれている。
ぼく達はずっとこうして、安心していたい。いつか、ママのお腹の中にいた時のように。
「そろそろ、おしまーい」
どのくらい遊んでいたのか。そんな声が聞こえると、今度はあたりに様々なおもちゃや動物たちが現れた。
嬉しそうにおもちゃを手に取る子たち。かわいい犬やネコを抱き上げる子たち。
「さあ、行くよ」
最初の子が先頭に立つ。今度は小さな鐘を手に。
「地上とは、いったんサヨナラだ」
でもまた、きっと会える。
もう僕の事が見えない、パパやママとも。
「バイバイ」
僕達は鐘の音に導かれ、光の方へ進んでゆく。笑いながら。はしゃぎながら。
誰もロープを引いていないはずなのに、あの鐘の音がまた響いてくる。
ディンドンダンドンディンドンダン
……またね。
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