【童謡】鐘の音

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

【童謡】鐘の音

 ディンドンダンドンディンドンダン  何やら陽気な鐘の音が聞こえる。  一人で地面に絵を描いていたぼくは、その音が聞こえる方へ歩き出す。  するとどこからか、同じような子供がちらほらと現れる。  広場にある、低い塔の上の鐘を鳴らしているのも、また子供。  大きく重そうな鐘に繋がる、長く太いロープを軽々と引いて。 「君もやってみる?」  言われてやってみると、簡単に鳴らせた。  ロープを引く役を代わる代わるにみんなでやる。だれかと遊ぶのが楽しくて、キャアキャアと声が出る。こんなの久しぶりだ。  鐘の音につられたのか、子供の姿がさらにふえる。同じようにあつまってきただれかが鳴らし、ぼくも鳴らす。  みんなのために鐘が鳴る。  ロープを引かない子供は、いつしか輪になって踊り出す。まるでお祭りのよう。 「もっと鐘を鳴らして」  最初に鐘を鳴らしていた子が言う。  ああ、楽しい。さみしくない。  辺りは光にあふれ、あたたかな空気に包まれている。  ぼく達はずっとこうして、安心していたい。いつか、ママのお腹の中にいた時のように。 「そろそろ、おしまーい」  どのくらい遊んでいたのか。そんな声が聞こえると、今度はあたりに様々なおもちゃや動物たちが現れた。  嬉しそうにおもちゃを手に取る子たち。かわいい犬やネコを抱き上げる子たち。 「さあ、行くよ」  最初の子が先頭に立つ。今度は小さな鐘を手に。 「地上とは、いったんサヨナラだ」  でもまた、きっと会える。  もう僕の事が見えない、パパやママとも。 「バイバイ」  僕達は鐘の音に導かれ、光の方へ進んでゆく。笑いながら。はしゃぎながら。  誰もロープを引いていないはずなのに、あの鐘の音がまた響いてくる。  ディンドンダンドンディンドンダン  ……またね。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!