1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
【童話】虹と月と雲
ある穏やかな日。
退屈を持て余したのか、虹がこんなことを言い出した。
「お月さまはつまらないね。白いだけで、お日さまのような輝きもない」
びっくりした雲が答えた。
「いやいや、それは君が夜のお月様を知らないからだよ。闇の中、煌々と輝く美しさといったら」
それを聞いた月も、恥ずかしさからつい言葉に力がこもる。
「それを言うなら雲さんだって。
朝焼けや夕暮れの色合いの美しさとときたら、虹さんにも負けない」
すると、本当は自分の美しさを自慢したかった虹がついムキになる。
「夜そんなに美しいなら、昼も美しいはずじゃないか」
「だから時間帯が違うんですよ」
「何が違うんだい。ぼくは朝でも昼でも変わらないよ」
「でも、虹さんだって夜は消えちゃうじゃないですか」
侃侃諤諤、それぞれが勝手に言いあうのですっかり空がうるさくなった。
虹は、自信満々で通りすがりのカラスに尋ねた。
「お前はだれが一番美しいと思うね?」
賢いカラスはこう答えた。
「私にはわかりませんが、きっとお日さまが聞いたらこう言うでしょう。
『みんな私の光を受けて世界を彩る、愛しい子供たちだよ』と」
虹と月と雲は、思わずお日さまを見た。
お日さまが微笑みながら頷いたので、虹はすっかり恥ずかしくなって、夜でもないのにすうっと消えた。
以来、虹は傲慢さを恥じて、地上で自慢げに長居することをやめたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!