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国道二四七号線を真っ直ぐに行ったところ。
金太郎が出迎えてくれた。
割と賑わっていて、俺はおずおずと端っこに車を停めた。
初夏の風が気持ちいい。とりあえず車を降りた。
自動販売機が六つほど並んでいる。一番端にはコーヒーを入れてくれるやつも。美味いのだが、今日はホットの気分ではない。アイス缶コーヒーを一個買った。
プシュ
苦味が口に広がる。ノンシュガーのブラック。うまいんだな、これが。缶を眺めてふっと微笑む。それから一気に残りを飲み干した。
その道の駅は周りにドッグランのような公園があった。所々盛り上がって山のようになっている。全て芝生で包まれていた。俺はそこに寝転がった。誰もいない。地面の温かみが伝わってくる。目の前には空が広がるばかりだ。
目を瞑った。
息を思い切り吸い込む。
芝生の匂いがする。
そのまま俺はしばらく寝てしまった。
カサッ
誰かの足音で目が覚めた。立ち上がると体の節々がパキパキと音を鳴らした。あたりを見回しても誰もいない。俺は無性に気になって探した。
一人の女だった。白いワンピースに麦わら帽子をきた若い女。精霊のような後ろ姿だ。その女が俺の方を振り返った。その顔には涙の跡があった。
風が吹く。女の髪が揺れた。片手で帽子を押さえている。少し目深に帽子をかぶり直した。
「あの、なんかすみません。」
俺はそこを立ち去ろうと女に背を向けた。
「待ってください。」
可憐な女の声に俺は立ち止まった。
「あの、富士山ってここから歩いて行けますか?」
俺は怪しく思って女に歩み寄った。
「行けるには行けるが…。何をしに行くのですか?そんな格好で。」
登山ならジャージなどの動きやすい格好をするだろう。小さなショルダーバック一つというのもおかしい。あまり詮索はしたくなかったが、気になった。
「え?え、っと。…空気を吸いに…?」
オドオドとしていて嘘をついているように見えた。
「そうですか。じゃあ、俺の車に乗って行きますか?俺もそっちに向かおうと思っていたので。」
女は素直に頷く。俺は女が何をしようとしているのかわかった。
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