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「分かってないのはお前の方だ……俺が……一人の正しい王が地を統治することによって、この世は正常な方向へ進むことが出来る……元々あった、人類主体の栄華を極めた時代、文明社会へと戻すのだ。
便利で豊かな、物が溢れる社会に、俺の統治の下、全ての者が服従し駒となることで近づいていく……トゥリヤのように、自然第一主義を唱え、自然との共存を謳っていては、何の産業も発展しない。
人類はこの星の生命ピラミッドの頂点にいるのだ。地の代表者として大腕を振って歩いて何が悪い。環境など気にせず、まずは生産性を上げる方が大事だ。物質的に豊かであることが満たされた人生には欠かせない。皆そうだ。例外なんて無い。全人類が持つ素直な欲求だ。
トゥリヤはきれいごとを並べすぎている。実際に豊かな暮らしに身を置けば、絶対にお前らも、その甘美さから抜けられはしない。お前ら偽善者のために文明の再生が遅れているのだ。
ドーミヤの民は賢く、俺の施策に反対する者はいない。お前らだけが枷だ。……その事実の方が、俺には大罪と思えるがね」
「あなたはなぜ、今の地球がこうなってしまったのかということから、目を背けている」
「は?知ってるさ。核戦争のためだ。大変な環境破壊……それは行き過ぎたことだったのかもしれん。けれど文明の発達が招いた破壊という訳でも無い。それは国家間のプライドのぶつかり合いで、多くの国が核を保有し過ぎていたためだ。試してみたい気持ちと、先行が有利と言う事実が……」
「あなたは、核を持っている」
「………っ!」
ガヤマの顔が、岩のように硬くなった。
冷たい汗が全身から吹き出す。
ガヤマは努めて平然を装おうと、口角を無理に曲げて笑みを作った。
「っはは……何を」
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