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「ええ――、でもウチのおばあちゃんは凄く真面目な人だよ!小さい頃の記憶だけど、インパクトあったから覚えてるんだ。きっとそう言うこともあったんだよ。怖いよね!そんなんさあ、どこもかしこもフライパンみたいなもんじゃん?ねえ……」
言いながら、シマの睫毛が伏せって行く。
「そーゆう大地の熱を……あたし達人間は、もう体感することって、出来ないのかなあ……」
「…………」
年々、気温が下がって行く度に不安になる。
あたし達人類は、戦争をし過ぎて自然を壊し過ぎたから、地球はもう元の健康体には戻れないんじゃないだろうかって。
「あたしは見てみたいなあ。おばあちゃんが言ってたような、光が溢れていた頃の地球。キラキラ揺れる緑。動物も今よりずっと多様で、あちこちで普通にその姿や声を見聞き出来る、そんな活気ある世界……」
地表が冷たくなった今では多くの動物たちが絶滅し、照葉樹林はその葉を全て落としてしまった。
三十年前に大気浄化システムが世界各地に設置され、大気中の放射線物質の含有率は徐々に減少した。最近は呼吸用のマスク無しでも地上で過ごす人が殆どだが、ちょっと前までは誰もが必要不可欠だったのだ。
今でも完全にクリーンな空気を吸えているかと言われれば、恐らくノーだろう。
良く見る身近な生物と言えば生ごみにたかるハエやネズミ、それにゴキブリといった人類の残飯にあやかって生きているモノたちばかりだ。
美しい声を奏でる鳥や、草を食べる虫はあの日以降激減し、ほぼ見かけることが無くなってしまった。
あたし達は野菜や果物を人工光で育て、汚染の少ない地下で栽培している。
いろいろな作物が獲れているけれど、それはその野菜の元々の色なのかは分からない。薄いかもしれないし、それに味だって実はもっと美味しかったのかもしれない。栄養だって、低いかもしれない。
でもそれしか知らず、それに頼るしかないあたし達はそれらを日々食している。
でなければあたし達も、他の動物たちと等しく、早々にこの地に伏していたことだろう。
「……戦争は、過去のことじゃない。人類は地球がこうなってしまった後も、未だに新地球律国家ドーミヤと、トゥリヤ聖護使団で戦いが続いているんだ……元の地球にはなかなか戻らないだろう。それで、今の俺たちに出来ることは?」
「え?あ……トゥリヤの青年団で、戦争難民となっている人たちに食糧や支援物資を届けたり、救護に当たったりすること」
「ご名答!……そう。今は、それくらいしか俺たちに若造に出来ることは無いのさ」
「うん……」
これだけ痛い目に遭っても、ヒトは戦いを止めない。
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