8.受胎告知

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 ピカッ  窓の外が光った、と思うと強烈な閃光が全てを白く染め上げた。 「な……何っ?」  赤くない。空の光じゃない。  敵からの攻撃だろうか?  けれど、それはいつまで経ってもやむ気配がなかった。  貨物室全体が光に溢れ、段ボールの影さえ消されている。  物凄い光の照度だ。  敵の照明弾にしては、時間が長過ぎる。  それに、この光、この光の色は………。   「これ、は」  ドクン、胸が鳴る。  あたしは、知っている。  ドクン、心臓が破れそうな程波打つ。  シマはフラフラと立ち上がると、箱を掻き分け、窓の外を覗き込んだ。  シマは驚愕のあまり声を失くした。  飛行船の機体が、宙で固まったように停まっていたのだ。  それはシマの乗っている船だけではない。  後続の飛行船も、先を行く小さな偵察機も、また薄く広がっている霧雲や下方で群を成している鳥たちでさえ、その姿のままピクリとも動かない。  まるで時が、停まってしまったかのようだ。  全てが、停止している。  動いているのは、息をしているのは、唯一シマだけだった。  ぞわっと冷たいものがシマの背を走る。 「……待って。みんな、どうしちゃったの」  ドアの向こうにいた団員たちも、話をしている姿のまま固まっている。  ある者は口を開けたまま、ある者は隣人の肩を掴んだまま、またある者は大量の荷物を手に片足を上げ、今にも転げそうな姿勢のままだ。  テレビの静止画像のようだ。 「何……?なんで、どうして。一体、何が何だか……」  冷や汗が全身を覆い、流れて行く。  動悸が止まらない。  自分だけが取り残されたような、不思議な孤独感。  焦燥に駆られてドアを蹴破っては、動いている者を捜した。  けれど、どんなに躍起になってあちこちを見て回っても状況は変わらない。  皆、同様だった。団長も、ルーシカさえ。 「嘘………」  夢ではないかと頬をつねり、痛さに悲嘆する。  現実?そんなわけ、そんなわけ、ないのに!  その時、何処かから視線を感じた。  外だ。シマはまさかと思いながらも飛行船のデッキから身を乗り出した。  そして、そこで見た。
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