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【2日目】
音斗はキッチンの棚で、あるものを探していた。探し物は複数あるのか、既に見つけたらしきものは、机上に並べられている。
天然水が入った大型ペットボトル一本と、オレンジジュースや乳飲料が入った小型ペットボトルが二本だ。
「何を探しているのかな?」
背後に現れたアルに驚くことも無く、音斗は棚を漁りながら言った。
「この間入れた薬瓶がなくなっちゃって~」
「……音斗くん、薬瓶は薬品庫に入れろとあれほど言ったじゃないか……」
アルが厭きれた様子で眉を下げる。音斗は謝罪しつつも、その顔に反省の色は無かった。
「でもアルさん、実験用の薬品は近場にないと安心出来ないんですよ」
おまけにこれだ。
音斗の言い訳には慣れているのか、アルが二つ返事を溜め息と共に零す。
「薬品庫と研究室の距離もそう大差ないだろう」
「でも此処のが研究室と近いんです」
先程の謝罪は何だったのか、と思わせるほどに音斗は強気で言葉を重ねていく。
「本当に、蓮見くんが見つけてしまったら如何するんだ。ないと思うが飲んでしまったら……」
「死んじゃいますね~」
音斗が平然とアルの言葉を遮る。その手は、まだ棚の中を模索している。
「まぁでも大丈夫です! 蓮見くんを死なせるようなこと絶対しませんから!」
「あぁ、頼むよ。彼は俺の見つけたパートナーなのだからな」
「はいはい」
アルの冷たい視線を感じながらも、音斗が怖気づく事は無く、寧ろその口角は吊り上っていた。
涼嘉は手足に嵌められた枷の鎖が長くなったおかげで許された自由を、満喫することもなくベッドの上で横たわっていた。
部屋はかなり殺風景で、模索するにも出来ないような状態だった。
壁にぴったりとくっ付いた大型のタンスを開けてみるも、その中は空っぽだ。何故置いてあるのか理解に苦しむ。
自分は着替えをさせてもらえないのだろうか。
思えば風呂にも入っていない。部屋が随分と快適なおかげで、汗などは掻いていなかったが、体を清潔に保ちたいという生理現象には逆らえない。
音斗になら言えるかもしれない。
涼嘉はそう思い、音斗が来るのを待った。
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