84人が本棚に入れています
本棚に追加
アルは音斗と同じ部屋で、ナイフを研いでいた。
「アルさんその音やめてください~」
音斗は片手で耳を塞ぎながら、アルには背を向けたまま顕微鏡をあるものに向けていた。
「音斗くんもそれやめてくれないか。特にキッチンに置くのはよしてほしいな」
「もうここには場所がないんですよー」
音斗はアルの要望を聞こうとはしない。それをアルも分かっているのか、深く溜め息を吐いて厭きれた様に首を横に振るだけだった。
「蓮見くんほんとに表情少ないなぁ。いや、少ないどころかあれは無いに等しい……ですよねアルさん!」
「そうだな」
お互いに背を向けたまま、視線は目前に落としている。
だが音斗は直ぐに席を立ち、ショーウインドウのようなものを覗き込んだ。
「……ほんと、この子たちみたい」
ぼそりとそう呟いた音斗の目は、子供を見守っているかのように、穏や
かだった。
最初のコメントを投稿しよう!