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【4日目】
――――こんな状況下に在りながら、其れほど絶大な恐怖心も無く平然と生活している自分は、実はかなり順応力が高いのだと思った。
それに加えて、涼嘉は最近気付いたことがある。
その部屋の窓は、やけに高い位置に設置されていて、自分では手に届かないということ。
たしかに届く位置にあったなら、もうとっくに開けている。
無意識に昼間の太陽の、その心地よい暖かさを求めているのだ。
快適な空間だが、その点に関してはかなり不健康だ。
先程音斗と朝食をとった時も、音斗の向こうに見える外の世界が気になった。
こうして閉じ込められると、以前までは気にならなかったものが、気になるようになるものだ。
人は、何時だって無いもの強請りで苦しむ。制限されると、欲しくなる。
涼嘉は気を紛らわそうとしたが、テレビをつけようにもリモコンが見当たらず、その提案は自分の中ですぐに却下した。
昨日音斗が持ってきた、オレンジジュースに手をつける。懐かしい味だ。
何を思ってこの味を選んだのかは分からないが、気分は悪くない。
しかし、その時だった。
不覚にも手を滑らせコップごと落とす。カッターシャツは忽ちオレンジ色に染まった。
暫く唖然とするが、これはまずい、ととりあえず床を袖で拭く。
彼らは監視カメラを見ているだろうか。
だがこの状態で待っているのも躊躇われる。天然水だったなら良かったのに。
涼嘉は後悔しながらも、長い鎖を引き摺りその部屋を後にした。
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