99人が本棚に入れています
本棚に追加
4-dead end
バタン、とドアが鳴り、人の気配が消える。
いつもならまだ眠っているのだが、今日はとある目的のため、早々と布団を出た。
ナイトテーブルに置かれたロールパンの大袋には見向きもせず、そっと廊下を覗き込む。やはり、昇良の姿はない。
やけに調和の取れた空間を忍び足で徘徊し、床やら天井やらを観察する。どれだけの経済力があれば、こんな家に住めるのかと純粋に感心してしまう。
見たところ、監視カメラは設置されていないようだ。
だが、安心するにはまだ早い。
玄関を出ればあとは遁走するのみだが、そこまでにどんなトラップが仕掛けられているか分からない。
十分に警戒しつつ廊下を歩くと、一寸先に広い玄関が見えた。
瞬間、脳内にバチバチと電流が散り、ナイフで刺されくずおれる自身を映す。
竦みかけた足を何とか前進させ、やっとの思いで玄関に辿り着いた。
その時、靴箱の上で何かが動いた。
恐る恐る正体を確かめる。そして、言葉を失う。
――――カメラだ。それも、スピーカー付きの。
写真レンズは狼狽する朔斗を不気味に追いかけ、彼を見据えたまま、動きを止めた。
≪まさか、逃げようって言うんじゃないだろうなあ?≫
突然スピーカーが音声を発し、驚きのあまり壁に背をぶつける。
紛れも無く、昇良の声だ。
スピーカーがある時点で察してはいたが、このカメラには遠隔操作機能がついている。
此処には子供もペットもいない、それなのに。
IPカメラまで用意しているなんて。
今回の犯行は計画されたものだったのだ。選定や下調べの為、随分と前から監視されていたに違いない。
ぞっと肌が粟立ち、全身が震え上がる。
≪今から帰るから、そこで待ってろよ。少しでも動いたら……うーん、それはまた考えとくわ≫
通告は有耶無耶に終わり、その曖昧さがさらに恐怖を誘う。
一歩も動かずへたり込み、冷えた廊下の上で震えが治まらない膝を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!