4-dead end

2/4
前へ
/69ページ
次へ
 寒さと空腹で、力が入らない。  気絶していたのか、眠っていたのか定かではないが、目を覚ますと辺りは真っ暗になっていた。  昇良はまだ帰ってきていない。  これが逃げようとした罰なのだろうか。  座っているのも辛くなり、横たわろうとしたちょうどその時、ドアが開いた。  突如降り注ぐ照明に、目を細める。 「……ほんとに待ってたんだ」  情緒の無い眼差しが、じっとこちらを見ていた。  凍えた体に白湯が染み渡る。淡白な味も、今は何となく在り難い。  一息吐き、朔斗は隣を見遣った。 「あの、飲み物ありがとうございました……」 「どういたしまして。……さて、お仕置きは何にするかな」  何の躊躇もない発言に、愕然とする。  まだ、終わっていなかった。  極寒で放置されただけでも随分と(こた)えたのに、さらに酷いことをするつもりなのだろうか。  昇良はわざとらしく朔斗の様子を窺いながら、思索に耽っている。  屈辱的ではあるが、今はただ、彼がこの惨めな反応だけを楽しんでいることを切実に願った。 「あ、これ友人から聞いた話なんだけどさ、……やってる時にスタンガン当てると、その瞬間に締まってすごい気持ちいいんだって」 「ス、スタンガン……」 「そ、腹とか脚とかさ」  昇良が軽く口角を吊り上げる。  無論肯定は出来ないが、この状況下では否定すら命取りになる。  こんな生活を強いられていても、生きようとする自分が憎い。  だが、ただでさえ惨憺な彼との性行為にスタンガンを持ち出されては、本当に死んでしまうかもしれない。 「……ごめんなさい、ゆ、許してください……もう、逃げ、逃げません……だから、許してください」  自ずと溢れ出る謝罪に、また心が砕かれてゆく。 「そんな保障どこにもないだろ」 「ほんと、です……絶対、逃げま、せん……!」 「絶対信じない」 「本当、だから……ッ」 「黙れ」 d62514ca-a200-4e21-a0e1-7e3e17ab6dc3  行き成り押し倒され、息を詰める。  体重の掛かった肩が軋んでいる。  彼の所業は、嘗て『これ以上怖い人間はいない』と思っていた両親の存在が霞むほどに、非人道的だ。 「明後日、楽しみだなあ」  畏怖する朔斗を余所に、昇良は悪戯っぽく呟いて、眠りに就いた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加