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それから2日間、朔斗は眠ることも出来ず、生きた空もなかった。
拷問が待ち構えていると言うのに、何一つする術がないなんて、あまりにも残酷すぎる。
――――こんなことになるなら、あの日、妹の後をすぐに追っていればよかった。
恐れていたその日は瞬く間にやってきた。
居間で昇良がグラスを傾けている間も、必死に逃げる方法を考えた。
しかし、そもそも逃走を図らなければ、この状況には至らなかった。
ジレンマに苛まれ、結果的に立ち往生する。
今はもう、夜が早く終わる事を希うしかない。
部屋に暗闇が落ちてくると同時に、『脱げ』と命令される。
戸惑いつつも、渋々シャツを脱いでゆく。
恐らく、大人しく服従することだけが、負担を最小限にする唯一の方法だ。
昇良は手に持ったスタンガンの電極に、激しい火花を散らした。
覚悟したつもりでいたが、いざそれを目の前にすると、畏縮してしまう。
「これ、使ったことねぇから……ちょっと怖いんだけど、まぁ、死ぬとかはないらしいから大丈夫か……」
語気がふらついている。いつにも増して酔っ払っているようだ。
彼は性行為に及ぶ際、決まって酒を飲む。初めに彼に犯された時も、気付かなかっただけで、酩酊状態だったのだろう。
ふと、自我を失うほどに酔い潰れてから行為をする意味はあるのだろうか、と考える。
「何ボーっとしてんだ、下も脱げ」
「は、はい……!」
思考が一瞬で断絶される。
もはや奴隷だ。考える自由すら阻まれる、人権などない性奴隷だ。
慌てて下着も下ろすと、間髪を容れずに脚を割られ、朔斗はきつく目を瞑った。
「お前が悪いんだからな……逃げようなんて考えるから、こんなことになるんだ……」
突如右腕が引っ張られ、前腕に電極が宛がわれる。やめて、と口を開きかけた直後電撃が走り、それは声にならない叫びへと挿げ変わった。
反射的に昇良の手を弾き飛ばし、強烈な痛みを帯びた右腕を庇うように蹲る。通電された箇所から指先にかけて、ビリビリと痺れてこれっぽちも動かない。
「うわ……すご……、そんなに痛いのかこれ……」
興奮しているのか、気が動転しているのか、どちらともつかない様子で昇良が苦笑する。
「入れながら腹に当てたらどうなっちまうんだろうな……」
恐怖のあまり、声すら出なかった。
右腕に痛みと違和感が残る中、薄暗い視界では、小さな稲妻がバチバチと音を立てていた。
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