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5-fear
居間から聞こえる賑々しいテレビの音で、年が明けたことを知る。
軟禁されて、凡そ一ヶ月が経過した。
その間生活に変化は見られなかったが、あの日以来、逃げようなどと考える事は無くなった。
年末年始も食事や排泄、風呂を除いては、終日眠っていた。
相変わらず地獄のような毎日だが、この頃は繁忙期なのか、昇良がほぼ家を空けていたため、彼是一週間は忌まわしい夜を回避出来ている。
このまま終わってしまえばいいのに、と思う。
朔斗は閉ざされたカーテンの向こうを見つめた。白く濁った光が眩しい。まるで収監されている気分になる。いや、実際そうなのかもしれない。きっとここは、檻の中だ。
年が明けてから何日経ったのか、もう分からない。今日が何日で、何曜日なのかも、見当すらつかない。
それよりも、朝から胃の調子が悪い。吐き気に耐えるのに精一杯で、意識も不明瞭になる。
吐いてしまいたいが、ベッドを汚してまた怒られるのが怖い。
必死に深呼吸をし、気を落ち着かせる。
今日から二連休だと昇良が言っていた。そこから分かる事はただ一つだけ、――――今夜は彼に抱かれるということだけだ。
怖気付いた朔斗は、震えが全身を駆け上がってゆくのを感じた。
毛布の中で蹲っていると、体を覆っていた布がゆっくりと剥がされた。
「おい、どうした?」
昇良が顔を覗き込む。目を逸らそうとして、それさえも怖くて、挙動不審になる。
「……顔真っ青じゃねえか」
溜め息を吐いて立ち上がり、昇良はナイトテーブルの抽斗から小さな箱を取り出した。
「今日は寝てろ、やってる時に吐かれたりしたら困るからな。……解熱剤と吐き気止め、置いとくから自分で飲めよ」
枕に顔を埋めたまま、小さく頷く。
このまま部屋を去るのかと思いきや、彼は左隣に腰を下ろし、ベッドの上でPCを操作し始めた。
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