5-fear

2/2
前へ
/69ページ
次へ
 薬が効いたのか、数時間後には症状も治まり、やっと起床する事が出来た。  時間が分からないが、あたりが暗いことから、夜か真夜中であることを暫定する。  隣に昇良はいない。胸を撫で下ろし、彼が置いていった天然水のペットボトルを手に取る。  空っぽだ。  一考するが、また薬が欲しくなった時に水が無いと困ると思い、意を決して立ち上がる。  恐る恐る寝室の扉を開け、隙間から顔を出す。居間の灯りが付いている。昇良はまだ起きているらしい。  時間帯を考慮し、抜き足で廊下を渡る。 「……あの、水を貰えませんか……」  許可されていない用事で居間に来ているという後ろめたさから、声が小さくなってしまう。  ソファーで横たわる昇良には、届いていないようだ。  せっかく此処まで来たんだからと、少しだけ近付いてみる。 66ea4145-5d93-40e0-8090-f9ffba8df603  昇良は、膝を折り曲げて寝ていた。  寝室から持ってきたであろう、毛布を被っている。随分と暖房が効いているようだが、暑くないのだろうか。  無防備な彼の姿にどこか安堵していると、視界にあるものが飛び込んできた。  錠剤のシートだ。それも、可也の量である。  穴の空いたシートが何枚も散らかる机上は、実に奇妙なものだ。  何かの病気だとしても、量が多すぎる気がする。  そこで漠然と浮かんだのは、“違法薬物”というフレーズだった。  急に怖くなり、朔斗はそそくさと踵を返した。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加