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薬が効いたのか、数時間後には症状も治まり、やっと起床する事が出来た。
時間が分からないが、あたりが暗いことから、夜か真夜中であることを暫定する。
隣に昇良はいない。胸を撫で下ろし、彼が置いていった天然水のペットボトルを手に取る。
空っぽだ。
一考するが、また薬が欲しくなった時に水が無いと困ると思い、意を決して立ち上がる。
恐る恐る寝室の扉を開け、隙間から顔を出す。居間の灯りが付いている。昇良はまだ起きているらしい。
時間帯を考慮し、抜き足で廊下を渡る。
「……あの、水を貰えませんか……」
許可されていない用事で居間に来ているという後ろめたさから、声が小さくなってしまう。
ソファーで横たわる昇良には、届いていないようだ。
せっかく此処まで来たんだからと、少しだけ近付いてみる。
昇良は、膝を折り曲げて寝ていた。
寝室から持ってきたであろう、毛布を被っている。随分と暖房が効いているようだが、暑くないのだろうか。
無防備な彼の姿にどこか安堵していると、視界にあるものが飛び込んできた。
錠剤のシートだ。それも、可也の量である。
穴の空いたシートが何枚も散らかる机上は、実に奇妙なものだ。
何かの病気だとしても、量が多すぎる気がする。
そこで漠然と浮かんだのは、“違法薬物”というフレーズだった。
急に怖くなり、朔斗はそそくさと踵を返した。
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