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晃平君とラザリィス
時の迷い子。
既に死した筈のモノが何らかの要因で現代へ迷い込む事で成る存在。
水無月晃平の周りには、時の迷い子が何人か居る。
その一人、ラザリィス=ヴァルスリア=ライノールは、フランスの魔術騎士の家系である『ライノール家』の当主だった。
何故死んだのかは覚えていないが、此処に迷い込んできた時、愛剣を携え、全身鎧を身に着けていたのは確かだ。
「考え事ー?」
物思いに耽るラザリィスの視界の隅で、焦げ茶色のアホ毛がぴょこぴょこ蠢いている。
そのままラザリィスが視線を下に動かすと、焦げ茶色の髪に臙脂色の瞳のテディベアサイズの少年が、『麦茶うまうま』と書かれたシャツに臙脂色のハーフパンツ姿で立っていた。
「……コウヘイ」
「ニャー」
ピョン、とラザリィスの肩に飛び乗ると、晃平はお腹空いたー、と空腹を訴えた。ラザリィスが晃平のスマホを確認すると、時刻は正午を知らせ、ついでに未読のメッセージが溜まっている事を知らせていた。祀樹からだろうか。
「晃平、メッセージが」
「どれどれー」
ラザリィスに言われるがまま、晃平がメッセージを確認すると、『仕事あるから手伝え』という祀樹からのメッセージと、『オイルサーディン作ったからお裾分け』という光一からのメッセージが届いていた。
「……ご飯食べたらお手伝い」
「そうだな、まずは腹を満たさねば」
水無月晃平という不思議な少年と、彼等の物語は、此処から始まる。
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