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機嫌が悪くなることもあるのです
入ってくる言葉を右から左へ聞き流しながら、晃平は朝食作りを続行している。
ところどころ銀髪の混ざった黒髪に紅鶸色の瞳の美男、久世冥夜からはやれ『目玉焼きは半熟にしてくれ』だの、やれ『パンの耳は落としてくれ』だの、と注文が多い。
「……なあ、冥夜さん」
「なんだよ、直久」
それに苦言を呈すのは金髪に古代紫の瞳の少年・玄奘直久である。
いつもの光景である。
……ある一点を除けば。
「晃平、代わる」
「胡白?」
白金の髪に赤い瞳の男が、私服の上からエプロンを身に着けながら晃平の傍へと歩み寄って来る。
風間胡白。晃平に昔から仕えている従者だ。
「……晃平、怒っているのか?小人化が出来ていない」
「……怒ってるよ?冥夜さん朝帰りで疲れてるのは分かるけど注文多すぎてはっ倒してやり倒したくなってた」
声が、いつもより低く、怒気を孕んでいる。
これは晃平の機嫌が最低レベルに悪い事を表している。
自分が晃平を困らせていた事に気付いた冥夜は、バツが悪そうな顔をして、『……悪かった』と呟いた。
晃平は小人化して、冥夜の頭の上に乗っかると、寛ぎ始める。どうやらこのまま胡白に任せるようだ。
「メーさん、注文多すぎ」
「疲れてるんだよ」
「わかるけどさ、晃平困らせるのやめろって。『煉獄大剣(イグニートブランド)』振り下ろされても助けないからな」
ワークブーツを磨きつつ、祀樹も冥夜に苦言を呈した。
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