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麗遠の吸血鬼と晃平君
「……考え事かい?」
「んー、まあね」
ある日の朝、晃平は自分の向かいに座る黒の長髪の男、『麗遠』と朝食を食べている。
カリカリに焼けたベーコンと黄身が半熟でトロトロの目玉焼き、バターをたっぷり塗ったトーストと、コーヒー。それからカプレーゼ。
「……にーちゃんがさ、怒るんだよ」
「……へえ?」
晃平が言うには、どうやら『誰もが嫌悪するあの生き物』の着ぐるみを着て寝てる光一の顔に張り付いたところ、怒られてしまったらしい。
麗遠は苦笑いを浮かべつつ、トーストを一齧りし、咀嚼して飲み込むと、続けてコーヒーを一口飲んでから晃平にこう返した。
「自分がされて嫌な事を、したからじゃないかな、怒ったのは」
ごめんなさいしてから、もうやらないようにすれば、光一もきっと許してくれるよ。
麗遠の答えに、晃平はパア、と顔を明るくしてから『分かった!一生懸命ごめんなさいする!』と返した。
カプレーゼにオリーブオイルをかけながら、麗遠は笑みを浮かべた。
自分は璃燿の一部だが、晃平のお陰で此処に留まる事が出来ている。
(璃燿に感謝しないとね)
麗遠はそう心の中で呟いてから、カプレーゼを口に運ぶのだった。
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