140人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなた、どうなっているのよ!国王夫人の私がエステを立ち上げたいっていっているのよ!」
「はぁ…し、しかし…」
「何よ!文句があって?!なんで予算が足りないのか説明なさい!あなた、執事じゃなくって?!」
宮殿内の一角に位置する、アリアス夫人の仕事部屋にて、執事は強く叱責を受けていた。
「はぁ…予算が足りない理由を申し上げますと……誠に申しあげにくいのですが……」
「何よ!言いなさい!」
「奥様はこれまで、アリアス国の国家予算をご自身の美容や食事に使われてきました…」
「だから何よ!文句があって?!」
「い、いえ!とんでもないです!ですが、これ以上は…均衡予算でいかないと、国王様に、その、予算の使い道が知られてしまいます…」
「あら、それはまずいわね」
言葉とは裏腹にアリアス夫人はニヤリと笑い、執事に向かって驚きの言葉を言い放つ。
「もしも私が国家予算を私的運用していることが夫にバレそうになったら、あなた消えてもらうわよ」
「!!!」
あまりに恐ろしいことを、夫人はさも愉快そうに言ってのける。執事の表情は恐怖で引きつっていた。かといって、打開策を思いつくことはなかった。一体、エステを開きたいという私的理由によって命を落とすのだけは、勘弁してほしかった。
「で、ですが奥様。これ以上予算を使うと…」
「あ〜ら、あなた馬鹿ね。使うためには、増やせば良いのよ、増税よ増税」
「ぞ、増税ですか?!」
「夫には適当なこと言って誤魔化しておくわよ。大丈夫だわ」
「ですが、昨年、国税を10%値上げしたばかりです。民衆たちによる暴動が心配されるかと…」
「うるさいわね〜あなた、じゃあわかったわ。
ひとつの村からたんまりとりましょ」
「え……!」
「そうねぇ〜、やっぱりターゲットはあの女、フランソワがいるガイヤ村の税金を50%増やすのよ」
「50……!し、しかし奥様!」
「あら、消されたいの?」
「い、いえ、す、すぐに手配いたします!」
「おっほっほ!分かれば良いのよ!あ、あとあなた、わたくしの次の予定は何かしら?」
「は、はい、ソフィお嬢様とのお食事になっております」
「ソフィね、わかったわいきましょ」
こうしてアリアス夫人とその執事は、ソフィとの食事会のため、あらかじめ手配された部屋に向かった。
アリアス夫人。恐ろしい人物である。
あれほどまでに痛めつけたフランソワに、まだ手を加えようというのか。憎き相手、弱っている相手にも決して容赦しない、いわば野生のような女である。
最初のコメントを投稿しよう!