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「お前は突然何を言いだすのだ」
ロイドによる突然の暴露に、国王は驚き、思ったままの事を口にした。アリアス王家の食卓は凍りつく。この食事会にはアリアス夫人の実家であるソフィ家も臨席している。
勿論、ロイドに対して向けられた全員の視線は、穏やかなものではない。
「ロイド!お前ったら、バカな事を言うのはよしなさい!みなさんに失礼でしょ!ほら、アナタも何とか言ってちょうだい!」
国王は、取り乱す夫人を制し、ロイドに詳細を問いただす。
「ロイド。証拠があっての事なんだろうな。
このような場でそこまで言い切って、勘違いだったでは済まされんぞ」
「はい、分かってます。お父様」
国王のあまりに威厳のある姿勢に押しつぶされる事なく、ロイドは自信を持って言い放つ。
そして切り札のカードを切った。
そう、盗聴器だ。
ロイドが盗聴器を取り出すと、アリアス夫人とソフィは不安な表情をしだす。しかしそれを気に留める事なく、ロイドは再生ボタンを押す。
昼食会での全容が、明らかになった。
録音が再生されている間、食卓はしんと静まり返り、先ほどのふたりの会話だけが大きな部屋中に響き渡る。国王は神妙な面持ちで耳を傾けているようだ。ソフィと夫人のふたりは動揺しきっている。顔面蒼白だった。
再生が終わると、いてもたってもいられずに口を開けたのは、アリアス夫人だった。
「こ、これは……!そ、そうよ!執事だわ!
執事に脅されてやったのよ!」
もはや、論理が破綻している。そんな事を今更いってももはや取り返しのつかない事は自明なほど明らかだが、執事は長年の鬱憤を晴らすかのごとく、夫人にとどめをさした。
「違いますッ!これをお聴きになって下さい!」
執事はおもむろに新たなボイスレコーダーを胸ポケットから取り出し、再生した。
ロイドは驚いた。他にボイスレコーダーがあるなんて、聞いていない。一体全体、どのような内容なのだろうか。
"もしも私が国家予算を私的運用している事が夫にバレたら、あなた消えてもらうわよ"
まさか、あの時の会話まで執事は録音していたのだ。アリアス夫人は手で口を押さえて驚いている。再生が終わると、執事は再び話し始めた。
「私は今まで、御婦人にこのような仕打ちを幾度となく受けて参りました。しかしいつか、いつかこんな日が来ると思って、録音していたのです!」
「あなたふざけないでちょうだい!執事でしょ!」
「それは、こっちのセリフだーー!!!
私がお仕えしているのは、アリアス王家の人間なはずだ!お前みたいなスパイなどではない!」
「……!」
初めて執事から反抗された夫人は、驚きを隠せないようだった。
そして次に口を開いたのは、ロイドだった。
「お父様、これを御覧になってください」
そういってロイドが掲げたのは、ルビーの指輪だった。
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