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「ルビーの指輪は盗まれてなどおりません!」
これには流石の国王も驚いた様子だった。
しばらく呆然と指輪を見つめたあと、視線を夫人の方へ向けた。それは非常に厳しいものだった。
「どういう事だ!」
「あなた、いや、これは、ちが……」
「追放だ!!この穢らわしいスパイを、ただちにこの宮殿から追放せよ!!!」
国王が声を張り上げると、数十人の御親兵たちが部屋に集まり、うなだれる夫人やムーア家の人間たちを引っ張っていった。
国王はあまりにショックが大きかったようだが、それでもロイドと執事に対する感謝を述べる事を忘れなかった。
「ロイド。正直に教えてくれてありがとう。
次の国王はお前だ」
「えっ……!」
意外な一言だった。ロイドは、隣にいるドリスの顔色を伺った。ドリスはただただ申し訳なさそうに下を向くばかりだ。
「ロイド、みんなに挨拶せよ」
「承知しました。お父様、ただ、この一件落着を伝えたい人がいるので、少しお待ちいただけますか」
「ん、何の事かはよく分からんが、構わん」
ロイドが向かった先は、フランソワの自宅だった。フランソワに、濡れ衣が晴らせたことを伝えると、ナタリーと一緒に喜びの涙を流した。
そして何度も何度も、ロイドに感謝の意を伝えた。
「ロイドさん、本当に、本当にありがとうございました」
心の底から感謝しているようだ。
「とんでもないですよ、フランソワさん。僕は事実を証明したまでです。それともうひとつ、僕からあなたに受け取って欲しいものがあります」
「ロイドさん……!!!」
ロイドがフランソワの前に差し出したのは、
ルビーの指輪だった。
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