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「自己紹介がまだだったな。俺は久我要。今年で社会人六年目、ギリギリ二十代。桐ケ谷は?」
「何が?」
「自己紹介だよ」
「桐ケ谷玲旺、二十二歳。知ってんだろ?」
舌打ちしながら渋々答えると、久我が端正な顔を歪ませ眉間の皺を深めた。
「舌打ち禁止。あと、そんな言葉遣い外でするなよ。恥をかくのはお前だけじゃない。俺達営業は、フォーチュンの看板背負って外に出てるんだからな。自覚しろ」
久我の厳しい物言いに、叱られ慣れていない玲旺は一瞬怯む。ただ、「俺達営業は」と言ってくれた事が、社長令息ではなくただの社員として扱ってもらえたようで嬉しかった。
「ハイハイ、客の前では行儀良くしてりゃいいんだろ。わかってるよ」
「ホントかよ、不安だなぁ。今から行く所は、渋谷にあるセレクトショップだ。新事業の一環で、若い世代にも客層を広げるために売り込み中なんだ。ここに置いてもらえれば、フォーチュンの評価が確実に上がる。何度も猛アタックしてるけど、なかなか厳しくてね。今日持参する商品を気に入って貰えるといいんだけど」
「そんなに凄いところなの?」
「ああ、行けば解る」
真っ直ぐ前を見据えながら話す久我の顔は真剣だったが、どこか楽しそうでもあった。
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