第4話 渋谷のヴァンパイア

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第4話 渋谷のヴァンパイア

 渋谷駅から少し離れた神南エリアには、セレクトショップが点在していた。どの店も個性的でセンスが良く、近所に住んでいながら今まで渋谷に興味のなかった玲旺でさえ、オフの日に改めて来たいと思えた程だ。  そのうちの一軒、ガラス張りで洒落た外壁の店舗の前で久我が足を止める。「ここだよ」と玲旺に笑いかけ、開け放たれた入り口をくぐった。   扉の木枠は、わざと塗装が剥がれて掠れたような風合いに仕上げられている。焦げ茶色の船の甲板みたいな床に、レンガの壁。錆加工を施した鉄のシャンデリア。吹き抜けになっている高い天井に、店の中央には螺旋階段。大きな窓からは太陽光が差し込み、程よく店内を照らしている。  インテリアだけ見るとアンティーク調だが、取り扱う商品は新進気鋭なデザインも多く、とてもカラフルだった。かと思えば、上品で質の良い服も陳列している。そのアンバランスさが絶妙で、かえってそれぞれの商品の良さを引き立たせていた。 「すっげえ……センスいいな」  玲旺は思わず呟きながら、店内を見回した。 「あら、嬉しい! 素直な子は大好きよ。あと、可愛い子も大好き。つまり、キミは僕のドストライク」  玲旺は声のした方を振り返り、すぐ後ろに立っていた人物を見上げて息を飲んだ。
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