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「いやいや、違う。ホントにお前の意見が聞きたいだけ」
だったらそう言えばいいのにと思いつつ、やはりどこか試されているような気がして、並んでいる便箋サイズの案内状を真剣な眼差しで見つめる。
「正直どちらもパッとしないと言うか……。右の方はマゼンダピンクの用紙に白のゴシック文字でカッコいいけど、スマートカジュアルの雰囲気とは程遠いし、左はエレガント過ぎてターゲットの年代に敬遠されそう。地図は見易くていいと思うけど」
「なるほど、どちらもイマイチか。吉田、前回新しく出た案のサンプル出来てる?」
吉田が頷きながら、新たに机の上に案内状を一枚置いた。「あっ、これ凄くいい」と、玲旺がぐっと身を乗り出す。
薄茶の便せんにフォーチュンのマークである四つ葉があしらわれ、濃い茶色のツタ模様が文面を縁取る様に刷られている。童話の一ページのようだが子どもっぽさはなく、上品で清楚だった。まさにスマートカジュアルを体現したようで丁度良い塩梅だ。
久我が顎に手を添えて、考え込むような仕草をする。
「俺はこのピンクにゴシック体の方も良いと思ったけどなぁ。確かに少しカッコ良過ぎるけど、華やかで目を引くだろ?」
「これ単体なら良く見えるけど、他のブランドからも案内状が来たら埋もれるぞ。似たような感じの案内状多いから。あ、多いですから」
いつの間にか敬語を忘れていた玲旺が慌てて取り繕う。鈴木がふふっと笑った後、遠慮がちに口を開いた。
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