第9話 見目麗しい後継者

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「『ジョリー』って?」 「元は伍楼屋(ごろうや)という老舗の洋品店です。ずっと婦人服中心に扱っていましたが、業績悪化を打開すべく、一昨年から取扱商品すべてを若者向けにシフトチェンジしたんです。その時、社名もジョリーに変更されました」  玲旺の問いに、吉田が眼鏡をクイッと上げながら答える。それから眉を八の字に下げ、不快そうに顔をしかめて話を続けた。 「ジョリーは我が社の売れ筋商品を模倣して、更に安価で販売するのです。ソックリならば抗議もできますが、アレンジを加えるので今のところ上手くすり抜けられている状態です」 「なんだよそれ! そんな好き勝手させんなよ。何とかなんねーの?」  口を尖らせ悔しさを滲ませる玲旺に、吉田は首がもげそうなほど何度も頷いた。 「所詮うちの真似しか出来ないジョリーに対する、業界の評価は冷ややかなもので、今後の伸びもたかが知れています。でも、だからと言って放置して良いわけがないですよね!」  気が弱そうだと思ったが、意外とアグレッシブなのかもしれない。「だからこそ」と、吉田は拳に力を込めて力説した。 「先細りのジョリーとは違って、フォーチュンには有望で見目も麗しい後継者がいるんだってことを知らしめてやるのです!」  机に乗り上げそうなほどの勢いで熱弁する吉田の肩を、久我は更に鼓舞するように叩いた。
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