第10話 熾烈な戦場

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 フォーチュンのブースは二小間を使用したので、他より広々としていた。玲旺は案内状の童話のようなイメージを生かし、スペースの壁を全て木目調にしようと提案した。そしてブースの中央に一点だけ、今期もっとも力を入れているコーディネートのトルソーを置く。何体も置くと雑然としてしまい、かえって人の目に留まりにくいのではないかと考えたのだ。  その他の服を吊るすためのハンガーラックは童話のイメージを壊さないよう木製にし、ブースの入り口にアンティークの革トランクを広げ、その中に小物を飾った。  やがて開場を知らせるアナウンスがホールに流れ、自然と拍手が沸き起こる。そこからはあっという間だった。すぐに会場内は人で埋め尽くされ、熱気と殺気に圧倒されそうになる。  怯みそうになった玲旺の隣に並んだ久我が、「桐ケ谷」と、そっと耳打ちした。 「直ぐにでも商談したそうな企業は、奥のスペースに案内してくれ。今日は無理でも後日商談に発展しそうな所の名刺は必ず貰うんだぞ。オーダーシートを渡すのを忘れるなよ。顧客になる気がないのに御曹司の名刺を貰いたいだけのミーハーな奴には『名刺を切らしているので』と言って渡さなくていいからな」 「そんなの見分けられる自信ないです」 「勘でいいよ。フォローするから心配するな」  ポンと玲旺の肩に手を置いて、久我は励ますように笑顔を向けた。玲旺も素直に頷く。
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