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「着替えて参りますので、少々お待ちいただけますか」
「ええ。ありがとう、お願いしますね」
玲旺の返答に鈴木は目を剥いたが、玲旺は女性から服を受け取ると誰もいない商談スペースへと移動した。ここならパーテーションで区切られているので、問題なく着替えられそうだ。
トビー素材の白いワイシャツに袖を通し、ミモレ丈のフレアスカートを穿く。ウエストのサイズは全く問題ないが、足がスースーして違和感しかない。丈が短めのジャケットを羽織った瞬間、クスクス笑っている久我の気配を感じて、玲旺は思い切り顔をしかめながら振り返った。
「嘘つき」
「ん? フォローがいる場面だった?」
「あの女性、有名人か何かですか」
「さあ、誰だろうね。有名人じゃなかったら引き受けなかった?」
「受けますよ。顧客候補には変わりないんだし」
玲旺の答えに久我が満足げにほほ笑む。その様子を見て、ああ自分は間違っていなかったんだなと確信した。同時に「試しやがって」と言う気持ちも沸いて、玲旺は頬を膨らませる。
玲旺の心情を察したのか、久我は苦笑いしながら箱からパンプスを取り出し、玲旺の足元に置いた。
「お待たせしました」
風を切る様に堂々とブースを横切る玲旺に、通路を行き交う人々から小さなどよめきが起きた。歩く度にタックの入ったフレアスカートがふんわりと優雅に揺れる。女性は「ほぉ」と感嘆の声をあげて目を細めた。
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