第11話 格の違いを見せつけろ

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 嬉しくて顔の筋肉が緩んでしまうのを両手で押さえながら、玲旺は隣のスペースに移動した。着替えている最中も、達成感と充実感で気が狂いそうな程だった。 「やぁねぇ。顔に出ちゃってるわよ、『仕事が楽しくて仕方ない』って」  誰もいないはずのスペースで急に声を掛けられて、玲旺はスーツのスラックスに片足を突っ込んだまま顔を上げた。 「ご馳走様ぁ」と妖しく微笑む氷雨の姿がそこにあって、玲旺は急いでスラックスを引き上げる。 「な、な、何してるんだよ!」  顔を赤らめて警戒するように睨む玲旺に、氷雨は人差し指を唇にあてて「しーっ」と静かにするよう促した。 「お隣の商談を邪魔しちゃ悪いわ」  氷雨がチラッと視線を横へ向ける。確かにここで言い合う訳にいかないと思い、玲旺はネクタイを締め直してスペースから出た。先に出ていた氷雨はラックにかかった服を一点一点吟味しながら、玲旺を手招きする。 「今回のブースのレイアウト、良い趣味ね。凄く好き。桐ケ谷クンが担当したんだって?」 「ありがとうございます。氷雨さんのお店の内装も素敵ですよね。アンティークと流行の融合、参考にさせて頂きました」 「あらあら、僕たちやっぱり気が合うね。付き合っちゃう?」  それには答えず、目を逸らして嫌そうな顔をする玲旺に氷雨はクスクス笑う。
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