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「なぁんだ、すっかり大人しくなっちゃって。この前は、全身の毛を逆立てて一生懸命威嚇してる子猫ちゃんみたいで可愛かったのに」
残念。と言いながら、ドレープの綺麗なブラウスを手に取った。
「緑川学長が選んだ服、俺じゃなくて氷雨さんに着て貰えばよかった。何でもっと早く来てくれなかったんですか」
「僕のモデル代は高いよぉ? それにしても、キミはちょっと見ない間にかなり成長したんだね。正直、フォーチュンはもう終わったなーって思ったけど、見直したわ」
「その節は……申し訳ありませんでした」
へぇ。っと氷雨は驚いた様に目を見開く。素直に玲旺が謝るとは思っていなかったようで、面白そうに目を細めた。
「紅林はキミと張り合うつもりでいたみたいだけど、今日は格の違いを見せつけたね。そう言えば、ジョリーのブースは見た?」
「忙しくて、まだ……」
頭を掻いた玲旺に、わざわざ行くことないわよ。と氷雨は言い捨てる。
「ブースに立ち入る気にもならないから、通りすがりに通路から見ただけだけど。前のシーズンに流行ったフォーチュンのシフォンスカートの模倣品をドヤ顔で展示してて、さすがに引いたわ。遅かれ早かれあそこは廃れるわね」
手にしていたブラウスをラックに戻すと、氷雨は玲旺の顔を覗き込む。
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