第11話 格の違いを見せつけろ

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「でも、せっかく芸能科を新設するのに、制服は既製品のデザインにするんですね。ちょっと意外」  氷雨は髪を撫でるのを止め、今度は玲旺の頬をつんつん突きながら緑川に視線を向けた。緑川はその質問は想定内だと言うように頷く。 「あぁ、学生たちのコンペで決める案もあったんだけどね。やっぱり、老舗の一流メーカーが手掛けた服を普段から身に着けるのも良いんじゃないかと思って。国内ブランドで探していたら、フォーチュンはイメージにぴったりだった。デザインも縫製も流石だわ」 「自分の会社を褒められるのは、こんなに嬉しいものなんですね。今後も期待に応えられるように、精進します」  嬉しさを滲ませて微笑む玲旺に、氷雨はやれやれと肩をすくめた。 「せんせぇ、桐ケ谷クンこんなにいい子に見えるけど、一ヵ月前はジョリーの坊ちゃん並みにお子様だったのよ。でもまぁ紅林と違って、桐ケ谷クンはあの頃もちゃんと自社製のスーツを着ていたから、一緒にしちゃ悪いか」  そう言われて、ジョリーのメンズブランドではなく、イタリア製のスーツを着ていた紅林を思い出す。 「別に、俺は自社ブランドだから無理して着てるわけじゃないですよ。他のブランドより一番着心地が良いし、しっくりくるから着てるんです」 「だから、そういう所よ。キミは歩く広告塔なワケ。キミの中で一番は、フォーチュンのスーツだって自信を持って言えるでしょう? 自社製を着てないジョリーはそのレベルに達していないって、海外ブランドに敵わないって白状してるようなものじゃない」  納得したように玲旺は深く頷いた。
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