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湯船の中で私は愛佳との会話を思い出していた。
両手でお湯をすくってはこぼすことを繰り返していた手が止まる。
「新田君、かあ……」
なんで新田君だったのかなあ。
愛佳は私が新田君を好きだと答えていたらどうしただろう。私に遠慮して諦めただろうか。
「それは、なさそうだなあ」
愛佳は心から新田君が好きなようだった。私の新田君への想いはまだあんなに強くない。
それに。私は愛佳が好きだ。愛佳を悲しませたくないし、これからも良い先輩でいたいと思っている。
私は新田君より愛佳を選んだのだ。
後悔はない。
それでも。
湯船にぽとりと一粒の涙が落ちた。
久しぶりのトキメキだったんだけどな。
私は自分の気持ちを消すようにお湯をかき混ぜた。
了
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