それは通り雨のような

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***  湯船の中で私は愛佳との会話を思い出していた。  両手でお湯をすくってはこぼすことを繰り返していた手が止まる。 「新田君、かあ……」  なんで新田君だったのかなあ。  愛佳は私が新田君を好きだと答えていたらどうしただろう。私に遠慮して諦めただろうか。 「それは、なさそうだなあ」  愛佳は心から新田君が好きなようだった。私の新田君への想いはまだあんなに強くない。  それに。私は愛佳が好きだ。愛佳を悲しませたくないし、これからも良い先輩でいたいと思っている。  私は新田君より愛佳を選んだのだ。  後悔はない。  それでも。  湯船にぽとりと一粒の涙が落ちた。    久しぶりのトキメキだったんだけどな。  私は自分の気持ちを消すようにお湯をかき混ぜた。              了
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