564人が本棚に入れています
本棚に追加
「やべっ。もう九時前じゃん!」
急いでシャワーを浴びて着替え、走って店に行くと「四十分遅刻―」とニヤニヤするアギルに、早くリヒトさんの所に繋げてくれと言うと、いつもの隠し本棚の壁の前で「いってらっしゃぁーい」と手を振られる。
着いた場所は昨日の扉の前。
そして目の前には車いすに座っているにも拘らず、片手で肩に大きな鎌を担いで怒っているリヒト。しかも無言なのが余計に怖い……
「初日から遅刻ですか?」
「す、すみません。急いだんですけど」
「まぁ、昨日の今日ですから仕方ないです。とりあえず、車椅子押してもらっていいです?」
言われるままに車いすを押して進んで行くと、外の庭にあるガラスで出来た建物の中に入る。
「温室?」
「ええ。ここで薔薇を育ててるんです。この奥にテーブルがあるのでそこまで行ってください」
テーブルには冷たい紅茶がティーポットで用意されていて、授業を受ける感じには見えない。それどころか、死神界ではなく天界か? と見間違えるくらいに綺麗な場所でキョロキョロとしていると、「今日は三住さんの聞きたいことに答えながら進めて行こうと思いまして。本は読みました?」
「テオが分かり易いって言っていた本はまだ目を通しただけで……。でもその本についていた地図みたいなのは持ってきました」と鞄から出して見せると、まずはその地図の話から教えてくれるという。
「まず、三住さんの住んでいる人間界。これが中心とすると、上に天界。下に死神界があると思って下さい」
「サンドイッチみたい」
「あ、その例えのが分かり易いですね。天界の方も同じ地図になっています。と言ってもこれは一部の街の地図なのですが。地図はこれだけでした?」
入っていたのはそれだけだと言うと、おかしいなと眼鏡の真ん中を人差し指と中指の二本で持ち上げ何やら考えている。
最初のコメントを投稿しよう!