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「いいのかよ」
「何がですかぁー? リヒトさんの事なら大丈夫ですぅ。それよりも! お出かけしましょう。お・で・か・け」
「きもっ」
眉間に皺を寄せたテオが、「蟹だってよ」と教えてくれたが、どこに買いに行くんだろう? しかも蟹って冬じゃなかったか?
「えっとですねぇ、この蟹なんて蟹か知ってますぅ?」
一冊の図鑑を見せられ、「タラバガニって書いてあるじゃん。夏に捕れないだろ」と言うと、「ノンノーン。このタラバガニはロシアまで行きますが、本当の目的はこれですこれ!」
アギルが指をさしたのは、タラバガニの下に載っている花咲蟹。
「何だこれ。見たことないけど」
「タラバが蟹の王様とするならば、今が旬の花咲蟹! この蟹の旬は今です! しかも幻の蟹と書かれているでしょう? これは僕もまだ食べた事が無いんですよぉ。という事で、早速行きましょう!」
「アギルさん、悠一の水着は?」
「僕のポケットに入ってますから大丈夫です。はい、図鑑を覗き込んでぇー」
嫌だ嫌だと思いつつ、つい覗き込んでしまう馬鹿な俺!
いつの間にか景色が変わり、誰もいない港の隅に到着。
「じゃぁ、あの陰になってるところでこれに着替えてください」
テオと一緒に渡されたのは色違いの水着。
ハーフパンツタイプなのは良いのだが、柄が超絶気に食わない!
「アギル……お前センスの欠片も無いな」
「えー、僕は好きですよ? お星さま柄」
テオが「何言っても無駄だ。早く着替えよう」と奥に行ったので、渡された水着に着替えるのはいいが、テオは黒に黄色の星。自分は紺にピンクの星。どんな趣味してるんだ!
「似合いますよぉ。では、すこーし奥の方に行って潜ってください。はい、手袋」
「誰にも見えてないんだよな?」
「もちろんですぅ。あ、人数分欲しいので三杯捕ってきてくださいね」
小舟に乗って移動し、ゴーグルをつけて潜るのはいいのだが、目の前にした蟹はかなり大きい。
「おい! どうやって捕るんだよ!」
「こう、手でガシッと?」
「もういい!」
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