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テオともう一度潜り、あまり動いていない蟹にテオが武器のリングを当てると、蟹がぐるぐる巻きになり、それを俺が引っ張り上げて捕る。海の中でのジェスチャーで決めたが、動く蟹に触らずとも良く、効率もいい。
「うわぁー、美味しそうですねぇー。この蟹が新鮮なうちに次は北海道ですよぉ」
ふざけるなと言う前に船に押し込まれ、次についた場所は海のど真ん中。
本当に北海道なのかも怪しいが、時折通る船の名前が日本語なので北海道ではあるのだろう。
「今の時期は産卵の蟹も居ますのでぇ、出来れば卵の……」
「行くぞ」
「まだ話してるのにぃ……」
話したりないアギルを放置して、先ほどと同じ作戦で蟹を捕るのはいいのだが、タラバガニとは違い、ちょっとサンゴ礁に見えない事もない。
どれでもいいだろうと、適当な大きさの蟹を捕り船に乗せると、早速蟹吟味をするアギル。
そんなことしていなくていいから早く店に帰りたい……
「上出来ですよぉー。この子卵がついてますぅぅぅぅ」
「早く店に戻してくれよ。海から出たら夏でも風邪ひく」
「あ、すいませんねぇ」
扇子をパン! と手のひらで叩くといつもの古びた本屋。
お風呂は広いので二人でさっさと入り、着替えてから台所に行くと、嬉しそうに料理をし始めるアギル。
これはもう何を言っても無駄だなと思い、蟹なら時間が掛かるだろうとテオを連れて近くのコンビニに行く。
「アイス食おうぜ」
「この店に売ってるのか?」
「コンビに来たことないのかよ! じゃぁ、初心者向けにカップのアイスにするか」
自分の好きなソーダ味のアイスと飲み物を買って公園に行き、袋から出して一つ渡す。
「暑いのに公園で食べるのか?」
「日陰だからまだ涼しいし、ずっとエアコンの部屋に居たんじゃ体壊すぞ?」
それもそうかと、テオがふたを開け一口……「うわ、下がピリピリする! 中に何が入ってんだ?」
「この粒々が舌の上で弾けるんだよ。味的にはラムネと一緒。慣れると美味いんだ。俺のおすすめ」
たまに、舌がと言いながらも、こちらの食べ物は面白いと言ってぺろりと食べるところは、やはり同じ年だからか違和感はなく、死神の仕事をしている時の顔つきとは違い、少し幼くも見える。
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