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入ってきた扉は自分が到着したと同時に閉まってしまい、目の前には驚いた顔の使用人の女性。以前食事をした際に給仕をしてくれたので、覚えてくれているだろうと「すいません。あの、リヒトさん居ますか?」と頭を下げる。
「頭をお上げくださいませ。リヒト様はただいま外出中でございます。すぐ連絡をお撮りいたしますので応接間にてお待ちいただけますでしょうか」
思ったよりもあっさりと通して貰えたので、応接間に入った瞬間力が抜ける。
母さんはそろそろ家に着いた頃だろうか? 靴が無ければ部屋に勝手に入る事は無いと思うが、もし見たら驚くどころではないだろう。
しかも、アギルの古本屋から帰宅したばかりでの出来事だったので、リヒトが来たら連絡を取って貰わないといけない。
まだかまだかと考えていたら、「悠一君大丈夫ですか?」と部屋に入って来たのはアギル。
「え? なんで?」
「それです」
アギルが指をさしたのは胸元。
「バッジ?」
「そうです。いきなり悠一君の気配が消えたんで、多分こちらだろうと。テオ君はリヒトさんを迎えに行きました。いったい何があったんです?」
帰宅して見たままの事を話し、まだ消えていなかったこちらへの扉にとりあえず入ってきたこと、リヒトに連絡をしてもらうように頼んでここで待っていたことを告げる。
「こちらに来て正解でした。悠一君の部屋には誰か向かわせます。まだそれ程時間も経ってませんので、残留でも残っていたら犯人の特定も出来るでしょうし」
「でも、母さんが帰って来たら……」
「大丈夫ですよ。術で覆って、普段と変わらない部屋に見せかけますし、私たちの姿は普通の人には見えませんから」
そう言って、アギルはすぐに手配してきますと出て行き、ソファに深く座ってはぁーっと大きな息を吐く。
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