死神界と人間界と天の世界

29/35
前へ
/173ページ
次へ
玄関から入り、母の部屋を覗くとぐっすりと眠っていたので、急いで自分の部屋に入る。 「引っ越したての部屋かよ……」  今まで乱雑に散らばっていた雑誌やゲームソフトなども綺麗に棚に収納され、布団もめちゃくちゃにされていたのに、ちゃんとベッドメイキングされているうえに、買って来たばかりの様にふかふかな布団。  でも、ちょっと匂いを嗅ぐと自分の臭いにほんのりとオレンジの香り。 「使用人の人がしたのかな?」  大切なものと言っても、通帳や印鑑は親に預けているし、自分の持ち物で大切な物と言えばゲーム位。  もう一度棚を見ると、持っているゲームはあいうえお順に並べてあり、無くなったものは無い。  アギルは何かを隠しているようだけど、どのような物かもわからないしと机の引き出しを開けると、引き出しの中もきっちりと整理整頓されている。しかも教科書までキッチリと!  明日、何もなくなっていないと報告すればいいかと、シャワーを浴びて布団にダイブし、そのままぐっすりと眠ってしまった。 「ゆ・う・い・ちくーん」 「うわぁぁぁぁぁ」 「おはようございますぅ。お迎えに来ましたよぉ」 「気持ち悪い起こし方するな! 勝手に入って来るな! 心臓に悪いわ!」 「テオ君は怒らないのに」  テオにもしてるのかと呆れ気味に、顔を洗ってくるから待っていて欲しいと言って支度を済ませる。  迎えに来たのは昨日の事があったからだろうと部屋に戻ると、ベッドの下に潜り込み何かをしている。  前に何もないって言ったはずなのに。 「あったあった。あ……」 「何があったのか見せてみろー」 「いや、これはそのぉ……」  隠そうとする前に手から毟り取ったものは「USBメモリ? あの店にパソコンあったっけ?」 「あるにはあるんですけど、僕、使い方わからなくて」  そんなこと言っても顔は正直なもので変顔になっているので、テオに預けるからな! とポケットにしまう。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

564人が本棚に入れています
本棚に追加