狭間の世界

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 訓練が終わってからは基礎的な事は続けるようにと言われていたので、毎日走り込みもしながら拳への感覚を忘れないように朝と夜と続けていたら自然に出来るようになり、自分が怪力になった気分。  古書堂には毎日行くのだが、アギルもテオもおらず、デスクに書類が積まれていて「ハンコ押しておいてください」とメモが貼られているだけ。  その処理も昼過ぎには終わるので、一応夜の二十時までは店や二階の掃除、洗濯などをして時間をつぶす日々が続いた。 「お茶、お茶下さい」  アギルが汗だくで戻って来たのは、そんな平凡な日々が一週間過ぎた時。  麦茶を渡すと一気に飲み干し、「悠一君、テオ君戻ってきてます?」と聞かれたので「まだだけど」と答える。 「テオ君から聞きました。PC見たんでしょう?」 「悪いと思ったけど。俺だけ何も知らないの嫌だったし」 「まぁ、それはいいです。いつかは君たちにもバレると思ってましたし」  結局のところ、自分だけまだ今何が起こっているのか分からないのが嫌なので、今の状況を教えてくれと言うと、「二階に行きましょうか」と促され、ダイニングの椅子に座る。 「食べながらですいません。携帯食料ばかりでお腹が空いて空いて」  珍しく納豆掛けご飯を食べながら、「PC見たと思いますが、任務中に戦死したはずの妹と弟が生きてました。勿論王家の者なので葬儀もしましたが、少しの肉片と着ているものしか残っていなかったので調査もしました。その惨状から本人と断定し、葬儀となってもう二百年経ちます。テオ君たちの第五部隊を中心に捜索をした所、死神の森……人は余り行かない場所ですが、そこに痕跡を見つけました。森にも警備は付いてます。本来ならば見つかっていてもいいような所に痕跡があったので、常に移動はしているみたいですが、森の奥の境界線は少し複雑でしてね、こちら……人間界にも他の場所にも、力のある者は簡単に出入りできるんですよ。しかも門を作れるものならば死神界のセンサーに引っかからないで」 「でも、それと俺との関係とか、あの黒い集団とか関係あんの?」
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